休み時間の免疫学 まとめ③

細菌とウイルスの違い

細菌 → 周りの「えさ」(ジュース内の糖分など)さえあれば簡単に自分のDNAを複製・増殖させて繁殖することができる。

ウイルス → 中にDNA,RNAが1,2本入ったカプセルのようなもので、細菌のような自己増殖機能は持っていない。

ウイルスの増殖方法

ウイルスはほかの生物の細胞内に入り込みその生物が持っている増殖機構を借りて自らのDNA,RNAを増殖させてしまう。

そのため、体液性免疫のように「抗体を作って好中球に食べてもらう」という方法はとれない。(抗体は細胞内には入っていけないから。)

そこでウイルスなどに対しては、「細胞性免疫による防御」が必要になる。

ウイルスが侵入する細胞は決まっている

ウイルスが侵入できるのは、自分が結合できる特定の蛋白を表面に持つ細胞だけであり、侵入する細胞はウイルスによって決まっている。(カギと鍵穴のイメージ)

例) 

ライノウイルス(かぜウイルス) → ICAM-1(上皮細胞の接着因子)

HIV → CD4陽性T細胞

※ICAM-1は気道上皮細胞や血管内皮細胞表面に多く存在するため、かぜウイルスは気道上皮から侵入しやすい。

「このウイルスはトリには感染するがヒトには感染しない」

= ヒトの細胞がそのウイルスの侵入口となる表面蛋白を持っていないということ。

ウイルス感染の過程

ウイルスは細胞上の表面蛋白に結合し、細胞内に侵入する。侵入するとウイルス核酸(DNA,RNA)を剝き出しにして、細胞のDNA.RNA複製機構を用いて複製される。
複製されたウイルス核酸はカプセルに包まれるなど再合成されて、隣接した細胞へ結合蛋白を介して侵入していく。

このようにウイルスは侵入可能な細胞の中で次々に増殖(感染)していく。

細胞性免疫

ウイルスを防御する主役は「細胞傷害性T細胞(Tc細胞)」というリンパ球。キラーT細胞とも呼ばれ、CD8ナイーブT細胞がエフェクター細胞に分化したものなので、CD8陽性T細胞とも表現する。

細胞傷害性T声望はウイルス感染した自分の細胞をまるごと破壊してさらなる感染を防ぐ。この流れを「細胞性免疫」という。

細胞性免疫反応によって生じる炎症を「リンパ球性炎症」といい、全身のリンパ節が腫れたり、肉芽腫と呼ばれる組織の炎症変化を伴うこともある。

またT細胞なので1つのTc細胞には1種類の抗原認識受容体(TCR)が存在する。

ウイルス感染の自然免疫①

ウイルスが細胞内に侵入すると、まずはマクロファージや樹状細胞といった監視員が細胞貫通型のTLR3,TLR7,TLR8,TLR9で細胞の核酸(DNA,RNA)を感知し、Ⅰ型インターフェロンのIFN-α,IFN-βを産生する。

また感染した細胞自身もIFN-α,IFN-βを産生する。

インターフェロンはサイトカインの一種で、ウイルスの複製を阻害する。またマクロファージやNK細胞、Tc細胞の殺傷能力を増大させる。

ウイルス感染の自然免疫②

細胞性免疫(Tc細胞)が発動するまでには数日間かかるため「遅延型(過敏)反応」とも呼ぶ。よってTc細胞が発動するまでは①の自然免疫が働く。

NK細胞は自然免疫で働き、ウイルス感染した細胞やがん化した細胞などを破壊しようとする性質を持つ。(MHCクラスⅠを付けていない細胞を破壊する)

NK細胞は監視員が出すサイトカイン(TNF-αやIL-12)によって活性化し、細胞傷害をする。またNK細胞はIFN-γを産生し、マクロファージを活性化させ、それによってますますIFN-α,IFN-βの増産や自らの活性化を促す。

ウイルス感染細胞の抗原提示

ウイルス感染細胞は自分のウイルス感染に気付くと、「こんなやつにやられた」とTc細胞に伝えようとする。

具体的には、感染細胞はウイルスの抗原部分を「MHCクラスⅠ分子」上にのせて抗原提示する。抗原提示を受けることができるのは、そのウイルス抗原に特異的なTCRを持つTc細胞だけである。

MHC分子と抗原提示

体内のほとんどの細胞は自分に特有のMHCという遺伝子部分を持ち、その遺伝子によって決まる分子「MHC分子」を細胞表面に名札のように持つ。

MHCクラスⅠ分子はすべての有核細胞が持ち、CD8T細胞に抗原提示する。

MHCクラスⅡ分子は抗原提示細胞だけが持ち、CD4T細胞に抗原提示する。

Tc細胞の増殖と活性化

ウイルス感染細胞はMHCクラスⅠ分子を用いてTc細胞に抗原提示し、一方ウイルスを取り込んだ抗原提示細胞がMHCクラスⅡ分子を用いてCD4ナイーブT細胞に抗原提示する。

既にウイルスを感知した抗原提示細胞やNK細胞が産生するIFN-γやIL-12によってTh1への分化・増殖が進む。Th1系サイトカインがCD8ナイーブT細胞をTcに分化・増殖させる。

IFN-γはCD4ナイーブT細胞をTh1に分化させる因子でもあるので、相乗的胃細胞性免疫反応を増幅させる。

活性化マクロファージ

細胞性免疫の主役はTc細胞だが、NK細胞やTh1から産生されるIFN-γを浴びたマクロファージである「活性化マクロファージ」も細胞性免疫の助っ人としてはたらく。

活性化マクロファージは、「ランゲルハンス型巨細胞」とも呼ばれる複数のマクロファージが融合した巨大な細胞にもなる。これらは貪食能が強いだけでなく、貪食した細胞を不活かすることができる。

もちろん、マクロファージ本来の仕事である炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-α),IL-12,IFN-α,IFN-βも産生する。

活性化マクロファージは頑張りすぎると細胞や結合組織が固まり、「肉芽腫」という結節がつくられて、ずっとその炎症の跡が残ることがある。

例としては「結核における乾酪性肉芽腫」や「サルコイドーシス」という疾患でよくみられる。

細胞性免疫or体液性免疫

結核菌のように細胞の中に寄生する菌も存在し、その防御には細胞性免疫が必要となる。

細胞外寄生微生物には「体液性免疫」、細胞内寄生微生物には「細胞性免疫」の防御がメインとなる。また真菌や寄生虫の防御には両方が絡む。

中和抗体

抗原提示細胞がCD4ナイーブT細胞に抗原提示すると、ほとんどはTh1細胞に分化・増殖するが、ある程度はTh2にも分化する。

Th2は抗体産生を促すサイトカインだったが、ウイルス感染でも「抗ウイルス抗体」はつくられる。

「抗体」には体液性免疫での「オプソニン化」のほかにも「中和抗体」としての働きがある。

ウイルスは細胞外に出てくることはあまりないが、「細胞融解型ウイルス」は、感染細胞内での増殖が済むと、感染細胞を破壊していっせいに細胞外に飛び出し組織や血液内に飛び散る。

このようにウイルスが細胞外にいるときに、ウイルスに直接結合して新たなウイルスへの侵入を防ぐための抗体である「中和抗体」が必要となる。中和抗体が結合すると、ウイルスは感染したい細胞に侵入することができなくなる。