休み時間の免疫学 まとめ②

体液性免疫

①で扱った一連の流れが「自然免疫」である。

自然免疫が突破されると、抗体による特異的な防御反応が必要になり、これを「体液性免疫」という。

抗体は菌が繰り返し感染することで作られる量が増幅する。

「繰り返しその抗原の侵入を受けることで免疫反応(抗体産生)が増幅される」ことを「ブースター効果」という。

リンパ球

リンパ球にはB細胞とT細胞がある。

リンパ球は骨髄で生まれ、胸腺、リンパ節、扁桃脾臓、腸管のパイエル版に多く存在し、これらの器官を「リンパ組織」という。、

リンパ球は各リンパ組織から血管、リンパ管へと絶えず循環している。

この循環をリンパ球の「ホーミング」という。

B細胞

B細胞は最終的に抗体を作る細胞だが、産生された時から表面にIgMという抗体をくっつけている。IgMは、B細胞が抗原を認識する受容体としても働くため、B細胞抗原認識受容体(BCR)とも表現される。

Ig=イムノグロブリン(抗体という意味)

他にIgG、IgA、IgE、IgDの5つの分類が存在し、細菌に対する体液性免疫ではIgGが最も重要になる。

1つのB細胞は1種類のIgMしか持っていないため、無数の抗原に対応できるようにむすうのしゅるいのB細胞が用意されている。

「B細胞のクローン選択説」

→抗原は、無数のリンパ球のレパートリーのなかから自分に特異的に結合するリンパ球だけを選択し、そのリンパ球を増殖させる。

抗原提示細胞

樹状細胞、マクロファージ、B細胞は、リンパ節においてT細胞に「こんなやつ(抗原)が体に入ってますよー」と教える「抗原提示」の役割を持つ。

この役割を持つ細胞を「抗原提示細胞(APC:Antigen Presenting Cell)」と呼ぶ。

樹状細胞は抗原提示において主役となる。樹状細胞はTLRの刺激やマクロファージからの炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-α)によって活性化し、専門の仕事場であるリンパ節へ向かっていく。

組織で菌を貪食した樹状細胞。マクロファージは、菌を食べながらリンパ管に入りリンパ節に移動する。

一方、B細胞は特異的に結合できた抗原をIgMとともに細胞内に取り込み、分解しながらリンパ管を通りリンパ節に向かっていく。

菌を細胞内に取り込んだ抗原提示細胞は、抗原部分をもう一度細胞表面のMHCクラスⅡ分子の上に出す。(抗原提示する)

MHC分子は「自分は外敵や侵入者ではなく、もとからいる自分自身の細胞です!」という身分証明になる細胞である。

 

抗原提示を受けるT細胞

T細胞は表面に「抗原+MHC分子」を認識、結合する受容体である、抗原認識受容体(TCR:T cell receptor)を持つ。

B細胞と同じく1つのT細胞は1種類のTCRしか持っておらず、無数の種類のT細胞が用意されている。

まだ一度も抗原提示を受けていないT細胞をナイーブT細胞といい、数か月~数年間体内に生存し循環する。

ナイーブT細胞は、抗原提示細胞から抗原提示を受けたり、サイトカインにかけられたりするうちに、種々の機能を持ったT細胞である「エフェクターT細胞」へ分化(成長)していく。

エフェクターT細胞になっても抗原提示は受けることができるし、その仕事はむしろ速くなる。

共刺激

樹状細胞やマクロファージは異物をTLRで認識して貪食を行ると、その刺激で表面に「共刺激分子(補助刺激分子)」を発現させる。

抗原提示細胞とT細胞は互いの共刺激分子を、手を握りるように結合させ抗原提示に必要な「共刺激」として互いに刺激し合あう。

共刺激分子の例として、抗原提示細胞のCD80/CD86やCD40にはそれぞれ、T細胞のCD28,CD40Lが結合する。

抗原提示細胞は抗原提示したことや共刺激分子からの相互作用によって種々のサイトカインを産生する。

エフェクターT細胞へ

「抗原提示」「共刺激」「サイトカイン」の3つの作用によって、ナイーブT細胞はエフェクターT細胞に分化、増殖する。

エフェクターT細胞にはヘルパーT細胞(Th1,Th2,Th17)、制御性T細胞(レギュレトリーT細胞:Treg)、細胞障害性T細胞(Tc)などがある。

ヘルパーT細胞の仕事は「抗原提示に反応し種々のサイトカインを産生する」ことで、サイトカインの種類によって免疫細胞の働きを調整している。

 

T細胞の分化

T細胞は大きく分けて、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞に分けられる。CD8陽性のナイーブT細胞はすべて細胞障害性T細胞に分化する。

CD4陽性T細胞については、どういうサイトカインの状況下にあるかが分化のカギになる。Th1はIL-12やIFN-γの状況下で、Th2はIL-4の状況下で、Th17はTGF-β,IL-6,IL-23の状況下で、TGF-βのみだとTregに分化する。

 

ヘルパーT細胞が産生するサイトカイン

Th1は主にIFN-γを産生。TFN-γはマクロファージが産生→CD4ナイーブTをTh1に分化→Th1がさらにマクロファージを産生→マクロファージや好中球を活性化というように、貪食細胞を活性化する流れをつくりだす。またIFN-γはB細胞のIgM→IgGのクラススイッチに必須。

Th2はIL-4,IL-5,IL‐9,IL-13を主に産生。これらはB形質細胞に分化・増殖して抗体を産生するのに必要なサイトカイン。ただしTh2系のサイトカインばかりだとB細胞のクラススイッチはIgEばかりに行ってしまい、アレルギーを引き起こすため、Th1系も必要になる。

Th17はIL-17を主に産生。IL-17は炎症を引き起こす局所の上皮細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞に作用。これらの細胞はIL-17の刺激を受けると、好中球やマクロファージを呼び寄せるケモカイン(IL-8)や、やってきた貪食細胞を活性化・増殖させるサイトカインを産生する。活性化された貪食細胞はIgGでオプソニン化された細菌を積極的に貪食する。

IgG産生のゴール

最終的に抗体を産生するのはB細胞が分化した形質細胞である。B細胞が活性化し、形質細胞に分化するためには3つの条件が必要で、

①B細胞上のTLRやIgMによる抗原認識と提示②T細胞からの共刺激(特にCD40)③Th1,Th2からのサイトカイン

である。ナイーブ T細胞→エフェクターT細胞の条件ととても似ている。

「B細胞表面のIgM」→「形質細胞がIgGを産生」というように、B細胞が形質細胞に分化する過程で、抗体のクラスがMからほかのクラスに変わることを抗体のクラススイッチという。